医療法人は医療法によって定められた法人です。
「医療」 という公益的な事業を目的とするためその営利性が制限されています。
具体的にはまず、目的が限定されています。そして、利益の配当も禁止されています。株式会社などの営利法人が病院などを開設することは実質的に禁止されています。公益性を確保するため法律の要件よりも厳しい基準を要求される場合もあります。
医療法人を作るためには都道府県知事の認可を受けなければなりません。そして、登記をすることによって成立します。
当事務所では医療法人設立手続の代行、代理業務を行っています。また、設立手続についての相談も受け付けていますのでお気軽に御連絡下さい。
医療法人の設立手続は株式会社や有限会社の設立手続よりもかなり複雑になっていて又、期間もかかります。以下で医療法人の設立手続について紹介します。
医療法人には 「特定医療法人」 「特別医療法人」 「一人医師医療法人」 「出資額限度法人」 などがありますが、まずは 「社団法人」 にするか 「財団法人」 にするかを決めなくてはなりません。
社団法人とは複数の人の団体に対して法人格を与えたものです。具体的には複数の人(法人も可)が出資をして 「定款」 という法人の根本規則を決めて設立します。「株式会社」 や 「有限会社」 も社団法人の一種です。
社団法人には 「社員」 「社員総会」 「理事会」 「理事」 「監事」 などの機関があります。
「社員」 とは社団法人の構成員のことで、日常一般的にいっている会社員のことではありません。この社員の集まりにたいして法人格が与えられるわけですから社員は社団の根本的なものと言ってよいでしょう。株式会社でいうと株主にあたるものです。社員総会で議決権を行使して法人の進路をきめます。設立時には最低2人必要です。また、1人医師医療法人の場合は3人要求されます。
また各社員に持分のある場合とない場合があり、ある場合は社員を辞めたときや法人を解散するときに財産の払戻しを受ける事ができます。
出資をしなくても社員になることは法律上は可能ですが、出資を求められる場合があります。
「社員総会」は法人の最高意思決定機関で、定款変更、予算や決算、合併などの重要事項の決定は社員総会で決めないといけません。
「理事会」 は社員総会で決めたられことを具体的に行っていく機関です。社員総会で大きな方針を決めて細かい事を決めていくという感じです。理事会での意思決定は原則として理事の過半数で決めます。
「理事」 は法人の役員です。法人の業務の執行を理事会を通じて決めていくことになります。この理事は原則として最低3人必要です。設立時の理事は定款で定めなければなりません。
理事の中から1人、 「理事長」 を選ばなくてはなりません。理事長は理事会の決定に従って医療法人を代表して業務を行います。実際に契約などを結ぶのは理事長になるわけです。株式会社でいう代表取締役です。理事長は原則として医師又は歯科医師でなくてはなりません。また、設立時の理事長は定款で定めなければなりません。
「監事」 は法人の財産の状況や理事の業務執行を監査します。もし何かしらの不正などを見つけたら都道府県知事に報告しなければなりません。監事は最低1人必要です。設立時の監事も定款で定めなければなりません。
財団法人とはある人が一定の目的のために財産(例えば1億円)を寄付してその財産そのものに対して法人格を与えたものです。社団法人の場合と同じように根本規則を定めますが財団法人の場合は 「寄付行為」 と呼ばれています。
財団法人には 「理事会」 「理事」 「監事」 「評議員会」 などの機関があります。社団法人と違うところは 「社員」 というものがありません。だから 「社員総会」 もないわけです。
財団法人には社員総会がないので、財団法人の場合は 「理事会」 が最高意思決定機関になります。そして業務も執行するわけです。ただし、 「評議員会」 を作って権限を分散させることもできます。
「理事」 と 「監事」 と 「理事長」 については社団法人とかわりません。原則として理事は3人、監事は1人。理事長は原則として医師か歯科医師。設立時は寄付行為で定めないとダメ。
「評議員会」 は法律で決められた機関ではありません。理事の選任などの理事会の権限を理事会からこの評議員会に移して理事会に権限が集中する事を避けることができます。
1人医師医療法人の場合はこの評議員会をつくって評議員を3名以上にすることが求められます。
医師又は歯科医師が常勤で1人か2人勤務する診療所を1箇所だけ開設する小規模の医療法人のことをいいます。この小規模の医療法人にはいくつかの特例が認められていて通常の医療法人より若干ですけど要件が緩和されています。
お医者さんが1人でやっているような個人の診療所でも法人にしやすくするためです。ただ、設立後の届などはほとんど同じです。
通常なら3人必要ですが都道府県知事の認可を受けると1人でも可能になります。ただし、実際は2人の理事を求められるのが多いようです
病院などをつくる医療法人は資本金と剰余金の合計(自己資本)が資産の総額の20%以上なければいけませんが,診療所のみのときはこの要件がありません。
これは持分の定めのある社団の場合の医療法人のときにみとめられる形態で 「退社や解散をしたときの持分の払戻しは出資額を超えることができない」 ことを定款に定めた医療法人のことです。
例えば5000万円出資した社員がいたとしてその社員が退社するときにその医療法人の資産価値が5倍になっていたとします。通常ならその社員が退社等をするときは2億5千万円の払戻しを受けられるはずですが出資額限度法人にすると出資額を超えることができないので5000万円の払戻ししか受けられません。仮に資産価値が半分になっていたら2500万円です。
資産価値が5倍になっていたとしてもそれは建物だったり医療設備などだったりで一度に多額の払戻しをすると法人の存続自体が危なく立ってしまうからです。
これは法律で決められらた要件をすべて満たすことによって公益性が高いと認められ、普通は医療法人でやってはいけない収益事業を行っても良いとされた医療法人です。やって良い収益事業も決められていますが結構幅広く認められています。
財団法人又は持分の定めのない社団法人しかなる事ができません。
特別医療法人になるためには新規の申請のときは法定された規定を定款又は寄付行為に定めて、追加の書類を添付をして設立の認可を受ける事になります。
今ある医療法人が特別医療法人になるには定款又は寄付行為の変更が必要になります。定款又は寄付行為を変更するには都道府県知事の認可を受けなければなりません。
これは公益性が高いとして国税庁長官の承認を受けた医療法人のことです。法人税、相続税、贈与税などの特例が受けられて税金が軽くなったり、税金を払わなくてよくなったりします。
要件として特別医療法人とほぼ同じです。
この承認を得るためには厚生労働大臣の証明書が必要になり、そして、各事業年度が終了するごとにこの証明書をもらって税務署に提出しなければなりません。
病院または介護老人保健施設を開設する医療法人は自己資本比率20%以上なければいけません。特別医療法人の場合は30%以上です。
ただし、診療所のみを開設する医療法人の場合はこの規定の適用はなく20%以上でなくても大丈夫です。なので、「1人医師医療法人」 の場合も少なくともプラスであれば設立できます。
医療法人の場合は株式会社などと違って現物出資をしても検査役の調査などは必要ではありません(ただし、医療機器などは公認会計士の評価証明書、不動産は不動産鑑定士の評価証明書が原則必要です)。
医療法では「医療法人はその業務を行うために必要な資産を有しなければならい」と定められていて、土地、建物、医療器具などは設立時においても所有していなければなりません。ただ、長期間で確実な賃貸借契約と認められれば所有していなくても大丈夫です。
土地や建物などの重要な財産は基本財産にするように求められる場合があります。これはモデル定款で定められているもので、基本財産にすると処分したり担保にしたりできなくなります。
基本財産にするかしないかは自由に決められるのでよく考えて決めてください。
新たに医療施設を開設するために医療法人を成立する場合2か月分の運転資金を要求されます。ただ、すでに診療所を開設していて相当期間経営してきた場合はこの規定は適用されません。しかし、個人経営のときの医業未収入金は出資した方が良いでしょう。
土地や建物などの資産を出資した場合、その出資した資産の購入資金のための借入金は設立する医療法人に引き継ぐ事ができます。
借入金を引き継ぐ場合は借入先に押印をしてもらった 「負債残高証明及び債務引継承認書」 が申請時に必要になります。
この場合設立時の貸借対照表の負債の部に計上されるのでその分出資金が減る事になります。
理事になってくれる人を3人、監事になってくれる人を1人、合計4人の人を探しましょう。
「1人医師医療法人」 の社団法人を作りたい場合は社員を3人要求されるので最低3人探してください(監事は社員がなれます)。
「1人医師医療法人」 の財団法人を作りたい場合は理事2人(1人で認可されれば1人)、監事1人の他に3名の評議委員を求められるので最低6名(理事が1人でよければ5人)必要になります。
理事は最低3人必要です。1人医師医療法人の場合、都道府県知事の認可を受ければ1人又は2人でも可能になります(ただし、2人要求されるのが通常)。
その医療法人が開設する病院や診療所の管理者は必ず理事にしなければなりません(管理者をやめると自動的に理事でもなくなります)。
「特別医療法人」 を作りたいときは6人必要になります。
理事の中から1人を理事長にしますが、理事長は医師又は歯科医師でなければなりません(例外もあります)。
監事の仕事は 「財産の状況の監査」 「理事の業務執行の監査」 「不整を見つけたときの総会又は都道府県知事への報告」 「報告のための総会の招集」 などです。
理事、医療法人の職員、医療法人が開設する病院・診療所などの職員は監事になれません。
通常は1人いればよいのですが、「特別医療法人」 を作るためには最低2人必要です。
未成年の人は法律では規制されていませんが、名前だけの理事は認められません。自分で判断できる能力が必要とされます。目安の年齢としては15歳です。また、社員であることも求められます (モデル定款をそのまま使うと原則として社員の中から選ぶことになります)。
大体の設立の手順は以下の通りです。各都道府県によって手続が違ってきますので、詳しくは各都道府県にお問い合わせ下さい。
申請の時期や医療審議会の開催日なども各都道府県によってまちまちです。その時期を逃すと医療法人設立の時期が大幅に遅れますので注意してください。
上記のとおり申請時期などが都道府県によって決まっていますので注意してください。
最初の役員は定款で定めなくてはなりません。「特別医療法人」 になるために必要な規定や 「出資額限度法人」 になるために必要な規定などもあります。
都道府県などでモデル定款(寄付行為)を用意してあるのでそれを参考にすれば通常はまず問題はおきないのではないでしょうか(法律よりも厳しい要件もあります。良いか悪いかは別にして)。
社員の確認、定款・役員の承認その他の重要なことがらを決議します。
この時点で法人として設立します。
財産目録明細書、負債の内訳書、不動産鑑定評価書なども必要になってきます。
1人医師医療法人を設立する場合は設立趣意書に代えることができる
登記簿、残高証明書、負債残高証明及び債務引継承認書、賃貸借契約書など
財産目録や貸借対照表など。診療所のみ開設の場合は不要
周辺の見取り図や建物の平面図なども必要。既に診療所を開設している1人医師医療法人の場合で増改築などをしていばければ一部簡略化
1人医師医療法人設立の場合ですでに2年以上の経営実績があるときは省略できる
1人医師医療法人設立の場合ですでに2年以上の経営実績があるときは省略できる
だいたいのものを上げましたが、上記以外に必要になる書類もでてきます。詳しくは各都道府県の窓口にご相談下さい。
医療法人は決算期終了後2ヶ月以内に都道府県知事に決算(財産目録、貸借対照表、損益計算書)を届けなくてはなりません。この決算は定時総会の決議が必要です。そしてこれらは債権者のために各事務所に置いておかなければなりません。
ちなみにモデル定款に従うと定時総会は年2回開催する必要があります。これは決算だけでなく次年度の予算の決議もしなければならないからです。ただ、年1回の開催でも認められることもあるので担当窓口に相談してください。
この決算の届けは平成17年10月3日からインターネットによる届けが可能になりました。基本的に24時間いつでも届けることができます。また、行政書士はインターネット申請の代理申請をすることができます。
定款・寄付行為の変更方法は定款・寄付行為に定めておく必要があります。その定められた手続をした上で都道府県知事の認可を受けなければ無効です。です
事務所の所在地と広告方法の変更は都道府県知事の認可は不要です。そのかわり変更後に届出が必要です
持分の定めのある医療社団法人を設立するときに金銭を出資したときは出資者、法人ともに税金はかかりません。
持分の定めのある社団社団法人を設立するときに現物出資をしたときは、出資者に対して譲渡所得税がかかります。ただ、「譲渡収入(出資額)−取得費(原価、取得費用など)」に対して課税されるので建物や医療設備などを通常の価格で出資した場合はほとんど税金はかからないと思います。たいてい問題になるのは土地の価格が値上がりしているときです。
現物出資をするときに時価の2分の1未満(タダの場合も)で出資した場合、時価で出資したとみなされて譲渡税がかかります。また、時価よりも低い価格で出資すると出資額と時価との差額が他の出資者への贈与とみなされて他の出資者に贈与税がかかります。
出資をしていない社員に持分を与えるとその社員には贈与税がかかります。
医療財団法人・持分の定めのない医療社団法人を設立するときに金銭出資をした時は持分の定めのある社団と同じで税金はかかりません。
財団医療法人・持分の定めのない医療財団法人に現物出資をしたときは、出資者に対して譲渡所得税がかかります。持分の定めのある社団法人と同じです。また、「その出資者の親族等の相続税・贈与税が不当に減少する結果となる場合」 は法人に対して贈与税・相続税がかかります。今、個人で開業されている方が法人を設立するときにこの要件を満たすのはちょっと難しいかもしれません。
出資額限度法人は基本的には持分の定めのある社団法人なので、税金の扱いも基本的には同じです。ただ、相続のときがちょっと違ってきます。
持分の定めのある社団法人の社員が死亡したときはその相続人はそのときの時価(資産が出資の5倍になっていれば出資の5倍)に対して相続税がかかります。
出資額限度法人で相続人が社員としての地位を相続したときは上記と同じでそのときの時価に対して相続税がかかります。
出資額限度法人で相続人が出資の払戻しをしたときは実際に払戻しをされた額(資産が何倍になっていようが出資額が上限)に税金がかかります。ただし、時価と払戻し額の差額を他の出資者に贈与したとみなされて他の出資者に贈与税がかかります。
上記のように医療法人に寄付をしたり社員に相続が生じたりすると実際には金銭の授受が行われていないのに税金がかかってきます。しかし、ある一定の条件を満たすと税金がかからなくなります。
この条件を満たすのは難しいかも知れませんが一応の参考にしてください。
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